地元の方々の熱い想いに支えられて・・
私の自坊がある臥牛院の所在地、福井県越前町で保育園を運営しております。その関係で初めはご縁のあった神奈川県の旧城山町(現在、相模原市)に保育所を設立すべく東奔西走していたことがありました。城山町と相模原市との合併にともない、この計画は頓挫してしまいましたが、その時に熱心に準備していたことを知った神奈川県の担当者から児童養護施設設立の誘いの電話がありました。
児童養護施設という重責に不安を感じましたが、30年間の里親の経験と子どもたちの置かれた現状を知るにつれ、「やらなければいけない」という気持ちが強くなってきました。「手まり学園」の設立はこうした中で決意しました。
計画が動き始めてからいろいろとたいへんなことがありましたが、それを支えてくれたのは建設予定地となった愛川町の協力者の方々です。たくさんの方々が社会的な使命感を持って、「愛川町に児童養護施設をつくるんだ」とがんばってくれました。協力してくださった地元の方々がいなかったら、途中で挫折していたかもしれません。
一方で、誤解からなる反対運動をする人もありました。児童養護施設に対する誤解やデマによる中傷などもありました。しかしそんな時も、地元の協力者の方々がささえてくださったのです。忘れ得ない印象的な出来事があります。
設立にあたっては地元に理解していただくため、数回にわたって説明会を開き、丁寧に説明をさせていただきました。回を重ねるにしたがって地元の理解は深まり、反対の姿勢をとる人が減ってきましたが、なかなか理解していただけない人がいたのも現実です。
2回目の説明会で、ある人が強硬な反対意見を述べていた時のことです。突然、ひとりの女性が立ち上がり、声をあげました。「困っている子どもたちのために施設をつくろうとしているのに、なんで協力できないのですか? あなたたち、いつまでも自分のことばかりではずかしくないのですか」と。
その時を境に、反対意見は急速に無くなっていきました。私はこんなにも熱い思いを持って、児童養護施設に協力しようとしてくださる人が地元にいることに感動しました。「手まり学園」はこうした方々に支えられて、ここまで来たのです。
(輝雲会理事長 藤木隆宣)